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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和40年(ネ)119号 判決

主文

原判決を取消す。

福井地方裁判所昭和三五年(ケ)第五〇号不動産競売事件につき同裁判所の作成した売得金交付明細表を別紙丙号目録記載のとおり変更する、

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取消す。福井地方裁判所昭和三五年(ケ)第五〇号不動産競売事件につき同裁判所の作成した売得金交付明細表を別紙乙号目録記載のとおり変更する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

(控訴代理人の陳述)

第一  控訴人の請求原因

一、福井地方裁判所は訴外抵当権者早瀬重志の申立によつて債務者訴外渡勝栄所有にかかる福井市佐佳枝下町八九番の七宅地二六坪一合五勺および債権者訴外渡アサノ所有にかかる同市佐佳枝中町一三九番の二宅地一三坪四合三勺ならびに同市佐佳枝中町一〇〇番地所在家屋番号同町一六四番木造板葺二階建店舗一棟建坪一四坪五合、二階一二坪五合に対し、同庁昭和三五年(ケ)第五〇号をもつて競売手続を開始し、控訴人は昭和三八年一二月一二日代金一、〇七〇万円でこれを競落した。しかし、競落代金の都合ができなかつたので右物件は再競売に付せられたが、再競売期日の三日前までに買入代金および代金支払期日より現実に代金を支払つた日までの間の利息ならびに手続費用合計金四万四、三二三円を支払つたので昭和三九年三月九日再競売は取消となつた。そして同裁判所は昭和三九年三月一八日の配当期日に別紙甲号目録記載のとおり売得金明細表を作成したが、控訴人は右配当期日に出頭し、被控訴人に対する右配当金七〇九万七、三八四円の全部につき異議を申立て、被控訴人がこれを承諾しなかつたので同日右異議は未完結に終つた。

二、被控訴人の右配当要求の理由は、被控訴人振出にかかる後記各手形につき為替手形については戻裏書を、約束手形については裏書をそれぞれうけ現に各手形の所持人であり、これが債権担保のため本件不動産に根抵当権を有すと謂うにあるが、右手形のうち被控訴人が所持するに至つた右債務者訴外渡勝栄、同渡アサノが裏書した後記(1)ないし(3)、(5)ないし(8)の為替手形金(甲第五ないし第一一号証の各一、二)および後記(9)の約束手形金(甲第一二号証の一、二)については左記の理由により配当を取消すべきである。

(一) 右為替手形ならびに約束手形は右債務者らと被控訴会社代表取締役青木茂並びに訴外福栄商事株式会社の元専務取締役であつた訴外松岡清等が共謀の上、前記競売売得金を詐取せんと企て、不当な配当を要求するため、昭和三八年一二月一二日競落後又はその直前、真実に反しそれぞれ虚偽の記入をなし、前記裁判所で不正にこれを行使する目的で急造したもので、全く無効の手形である。

(二) 仮に右主張が認められないとしても、右為替手形金および約束手形金債権は本件根抵当権の被担保債権となりえないものである。すなわち、乙第四号証の一の根抵当権の被担保債権は昭和三三年一二月一八日付で前記債務者らと訴外株式会社福井相互銀行間に締結せられた手形取引契約にもとづく債権であるところ(乙第四号証の二)、被控訴人は右被担保債権として左記為替手形金および約束手形金を請求していることは計算書(乙第三号証の一)により明白である。

(1) 支払期日昭和三五年四月一〇日の金二一万〇、三三五円の為替手形(甲第五号証の一、二)

(2) 支払期日昭和三五年四月二〇日の金六七万四、九〇五円の為替手形(甲第六号証の一、二)

(3) 支払期日昭和三五年四月二五日の金七三万一、四八五円の為替手形(甲第七号証の一、二)

(4) 債務者訴外渡アサノ振出にかかる額面金三〇〇万円の約束手形金の残額一三五万円

乙第五号証の一の根抵当権の被担保債権は借受金、その他債務一切および裏書又は保証した約束手形ならびに為替手形の割引による手形上の債務一切であり、登記されている被担保債権は手形割引による債務であるところ、被控訴人は右被担保債権として左記為替手形金および約束手形金を請求していることは計算書(乙第三号証の一)によつて明白である。

(5) 支払期日昭和三五年三月一三日の金四〇万一、七六〇円の為替手形(甲第八号証の一、二)

(6) 支払期日昭和三五年三月三一日の金四〇万三、二六〇円の為替手形(甲第九号証の一、二)

(7) 支払期日昭和三五年四月一日の金二六万八、八四〇円の為替手形(甲第一〇号証の一、二)

(8) 支払期日昭和三五年四月三〇日の金六五万〇、五七四円の為替手形(甲第一一号証の一、二)

(9) 支払期日昭和三五年九月二五日の金三五万円の約束手形(甲第一二号証の一、二)の内金二七万五、五六六円

以上を要するに、本件被担保債権は手形取引若しくは手形割引契約にもとづく債権に限定されているものであることは登記簿謄本(甲第一四号証の一ないし三)によつて明らかであるところ、前記為替手形および約束手形が債務者訴外渡アサノ(乙第四号証の一の根抵当権についての債務者)若しくは債務者訴外渡勝栄(乙第五号証の一の根低当権についての債務者)と債権者たる被控訴会社間の手形取引若しくは手形割引契約によつて発生したものでないことは、右各手形の振出人および裏書の状態、ならびに保証書(乙第一号証の一、二)によつて明白であり、被控訴人の主張によれば、右各手形債権の発生原因は被控訴会社と訴外福栄商事株式会社間の原糸売買契約にもとづくものであり、(但し甲第一二号証の一、二の手形は右取引関係にも全く無関係のものであることは手形の振出裏書の状態により明白)右債務者らはこれが支払について連帯保証したものであるとのことであるが、このような連帯保証にかかる債権が本件根抵当権の被担保債権にならないことは、各根抵当権設定契約書(乙第四号証の一、乙第五号証の一)および登記簿謄本(甲第一四号証の一ないし三)によつて明白である。被担保債権についてはこれを登記するにあらざれば利害関係人にその権利を対抗しえないものであるところ、登記面に表示された被担保債権は前記のごとく手形取引契約にもとづく債権若しくは手形割引契約にもとづく手形債権に限定されているわけであるから、被控訴人主張の連帯保証契約にもとづく債権については、これを控訴人に対抗しえないものであるといわねばならない。

(三) 仮に右主張が失当であるとしても、被控訴人は右各手形(甲第五ないし第一二号証の各一、二)については本件債務者らに対し手形法上なんらの権利をも有しないものである。

1、為替手形について

(1) 甲第五ないし第一一号証の各一、二の各為替手形には振出日の記載がないので手形として無効である。

(2) 右主張が認められなくても、被控訴人は本件債務者らに対しなんらの権利をも有しないものである。すなわち右各為替手形の振出人は被控訴人であるところ、最後の被裏書人が被控訴人であることが右各手形により明白であるので、最後の裏書はいわゆる戻裏書であるということができる。従つて、被控訴人は手形上の権利者ではあるが、同時にそれ以前において手形上の義務者であるから、自己に対してはもちろんその中間の義務者すなわち本件手形の裏書人である訴外渡アサノおよび訴外渡勝栄に対しても、手形上の権利を行使することをえない。故に右各手形の振出人である被控訴人は本件手形の引受人である訴外福栄商事株式会社に対してのみ権利を行使しうるに止まる。

2、約束手形について

甲第一二号証の一、二の約束手形の支払期日が昭和三五年九月二五日であること、第一裏書人が訴外中西松三郎(裏書年月日昭和三五年七月二六日)第二裏書人が訴外渡勝栄(裏書年月日昭和三五年七月三〇日)第三裏書人が訴外渡アサノ(裏書年月日昭和三八年四月一〇日)最後の被裏書人が被控訴人(裏書年月日昭和三八年四月三〇日)となつていることは右手形の記載によつて全く明白であるので、最後の裏書は所謂期限後裏書であるということができる。

然るところ、右手形については手形法第三条第一項所定の呈示がなされていないこと、右手形によつて明白であるので、仮に右手形の裏書の年月日が真正なものであつたとしても、期限前の手形の所持人であつた訴外渡アサノは訴外渡勝栄および訴外中西松三郎に対する遡求請求権を喪失したものというべく、被控訴人は訴外渡アサノの裏書によつて訴外渡勝栄、訴外中西松三郎などに対する償還請求権を取得したものということはできないし、又本件最後の訴外渡アサノの裏書が期限後裏書である関係上、訴外渡アサノは被控訴人に対し手形上の責任を負わないものといわねばならない。してみれば、被控訴人は右手形の振出人である訴外九谷辰雄に対し手形上の権利を有するにすぎないものであり、本件債務者である訴外渡アサノ 訴外渡勝栄に対してはなんらの権利をも取得するものではない。

しかも、期限後裏書は指名債権譲渡の効力しかないわけであるから(手形法第二〇条)、民法第四六七条により債務者に対し確定日付ある通知をなすに非ざれば、債務者ならびに第三者に対抗しえないところ、右のごとき通知がなされていることが立証されていない本件においては、右債権を控訴人に対抗しえないものである。

(四) 仮に右主張が理由なしとしても、本件各手形債権は時効の完成によつて消滅したものである。甲第五号証の一、二の為替手形の支払期日は昭和三五年四月一〇日、甲第六号証の一、二の為替手形の支払期日が昭和三五年四月二〇日、甲第七号証の一、二の為替手形の支払期日が昭和三五年四月二五日、甲第八号証の一、二の為替手形の支払期日が昭和三五年三月一三日、甲第九号証の一、二の為替手形の支払期日が昭和三五年三月三一日、甲第一〇号証の一、二の為替手形の支払期日が昭和三五年四月一日、甲第一一号証の為替手形の支払期日が昭和三五年四月三〇日、甲第一二号証の約束手形の支払期日が昭和三五年九月二五日であること、最後の裏書の年月日が昭和三八年四月三〇日であることは手形の記載自体によつて明白であるところ、右各手形金について被控訴人が福井地方裁判所に計算書を提出しこれを請求したのが、昭和三九年二月四日であることは、計算書(乙第三号証の一)によつて明白であるから、右時点において、本件各手形は振出人引受人裏書人に対する関係において、いずれも一年若しくは三年の時効が完成し消滅に帰したものであるといわねばならない。(債権者である控訴人が債務者に代位して他の債権者に対する債務の消滅時効を援用することができることについては、最高裁判所第一小法廷昭和四三年九月二六日判決参照)

三、以上の次第であるから、被控訴人が配当を要求している手形債権のうち正当なのは計算書(甲第三号証の一)の(1)金一三五万円の約束手形債権元本および計算書(甲第三号証の二)の右手形金に対する利息金三四万一、五五〇円の合計金一六九万一、五五〇円だけであり、爾余の分はいずれも失当として排斥さるべきである。

よつて正当な配当表は売得金一、〇七四万四、三二三円をまづ共益費用金一二万三、二二〇円に充当し、次いで被控訴人請求の約束手形金およびその利息のうち請求が相当であるとせられる金一六九万一、五五〇円に充当し、次いで訴外早瀬重志の有する抵当債権元本および最後の二年分の利息合計金二五一万七、四四〇円に充当し、次いで控訴人の有する抵当債権元本および最後の二年分の利息合計金一五八万四、〇〇〇円に充当し、残額の金四八二万八、一一三円を右早瀬の前記抵当債権に対する最後の二年分以外の利息金八五万四、八四〇円および控訴人の前記抵当債権に対する最後の二年分以外の利息金五〇万三、二四〇円並びに控訴人の公正証書にもとづく債権金七七六万一、八七八円の三口に比例分配の方法によつて充当すれば、別紙計算書記載のとおりとなる。

よつて福井地方裁判所昭和三五年(ケ)第五〇号不動産競売事件につき同裁判所の作成した売得金交付明細表を別紙乙号目録記載のとおり変更する旨の判決を求めるものである。

第二  被控訴人の主張に対する反論

一、甲第五ないし第一一号証の各一、二の為替手形に対する本件債務者訴外渡勝栄、訴外渡アサノの裏書が保証の意味でなされたとの主張について

被控訴人の主張は甲第五ないし第一一号証の各一、二の各為替手形について債務者訴外渡アサノが債務者訴外渡勝栄に対し遡求権を有することを前提としてなされているものであるところ、右各手形が期日に呈示されていないことは手形自体によつて明らかであるから、訴外渡アサノは訴外渡勝栄に対し遡求権を行使しえないものである(手形法第三八条第一項)とともに、訴外渡アサノの被控訴人に対する裏書は期限後裏書であるので、被控訴人は訴外渡アサノに対しなんらの権利をも取得しないものである。

二、被控訴人と訴外福栄商事株式会社間の継続的原糸売買契約にもとづき、訴外福栄商事株式会社が被控訴人に対し負担する債務について債務者訴外渡勝栄、訴外渡アサノが連帯保証した場合、右連帯保証にかかる債権が乙第五号証の一の根抵当権の被担保債権になるとの主張について

乙第五号証の一の根抵当権設定契約書によれば、

(1) 債務者は訴外渡勝栄であり

(2) 被担保債権発生の原因となる取引契約は契約書面では「現在若しくは将来拙者が貴殿に対し借受金、その他債務一切および裏書又は保証した約束手形並びに為替手形の割引を依頼したのでその手形上の債務一切を担保するため云々」となつているが、登記面では手形割引契約となつていることは被控訴人の自認するところである。

而して

(3) 民法第一七七条不動産登記法第一条が抵当権をもつて第三者である控訴人に対抗するためには登記しなければならないと定めている点、

(4) 昭和三〇年一二月二三日民事甲第二七四七号民事局長通達に鑑み、登記面において被担保債権の発生原因として記載してある範囲内の原因から発生した債権のみが第三者に対抗しうる被担保債権であると解するのが相当である。してみれば乙第五号証の一の根抵当権設定の目的が仮に被控訴人主張のとおりであつたとしても、本件手形債務の発生原因はあくまでも訴外福栄商事株式会社との間の原糸売買契約であり、前記債務者両名の連帯保証は乙第一号証の一、二によれば控訴人と右訴外会社間の買掛金債務若しくはその支払方法として振出された手形に対する連帯保証であることは明白であるので、右連帯保証にかかる債権は乙第五号証の一の根抵当権の被担保債権にならないこと明白である。

三、乙第四号証の一、二の特約について

乙第四号証の一の根抵当権設定、相互掛金、手形取引、当座借越および継続貸付契約証書は訴外株式会社福井相互銀行が同銀行で行つている銀行取引全部について取引先との間に迅速に而も正確に根抵当権設定契約を締結しうるよう予め用意している定型的契約書であるが、その具体的場合に即応して相互掛金の場合は右契約書の外、相互掛金契約を、手形取引の場合は乙第四号証の二のような手形取引約定をしている実状であるが、本件の場合は前記債務者両名との間に手形取引約定だけをしているものであるから、乙第四号証の一の契約は手形取引約定の範囲内のみで効力を有するものであり、而も被担保債権の発生原因として登記されているのは手形取引だけであるから、第三者たる控訴人に対抗しうる被担保債権は乙第四号証の一、二の債務者である訴外渡アサノと債権者間の手形取引契約によつて生じた債務に限定さるべきである。

してみれば、乙第三号証の一の計算書記載の(1)の支払期日昭和三六年一〇月二一日の約束手形金三〇〇万円(債務者渡アサノが割引のため振出したもの)の残金一三五万円のみが控訴人に対抗しうる唯一の被担保債権ということとなり、爾余の手形はすべて本件被担保債権とはなりえないこと前記のとおりである。

ところで被控訴人は乙第四号証の二の第三条所定の特約を援用し、右特約は乙第四号証の一の被担保債権となつている甲第五ないし第七号証の各一、二の為替手形(乙第三号証の一の計算書参照)についても適用されると主張しているが、右特約が適用されるためには右契約の債務者である訴外渡アサノが債権者に対し手形割引又は手形担保で金員を借入し(乙第四号証の二の第一条)右原因にもとづき自己振出の手形、裏書をした手形、若しくは支払保証をした手形を債権者に交付することが要件となつており、右関係はあくまでも手形の介在する金銭の消費貸借であるから「手形が要件の欠陥により無効となつた場合、権利保全手続の欠陥により手形上の権利が消滅した場合および偽造、変造、滅失した場合」でも手形面金額と同額の債務を負担し、損害金とともに弁済の義務が生ずるのは当然のことであり(乙第四号証の二の第三条)、当然のことを念のため契約書に記載しているものにすぎないのである。すなわち右契約は無効若しくは権利消滅した手形或いは偽造の手形でも有効にする特約ではなく、右のごとき場合でも現に借用した金員の支払を免れえないことを念のため記載したものにすぎない。

四、被控訴人の当審主張事実中債務承認ないし時効利益放棄の点は否認する。

(被控訴代理人の陳述)

一、控訴人主張事実中、本件競売がなされるに至つた経緯、別紙甲号目録記載の売得金明細表が作成され、控訴人が配当期日において被控訴人の配当金全部につき異議を申立てたこと、被控訴人がこれを承諾しなかつたので異議が未完結に終つたこと、被控訴人の配当要求の理由が控訴人主張のとおりであることは認めるが、その余の事実は否認する。

二、本件競売の売得金中被控訴人に交付さるべき金額は競売裁判所の作成した売得金交付明細表記載のとおりであることが正当である。

右交付明細表記載の第三順位による交付金七〇九万七、三八四円は債権計算書(乙第三号証の一、二)のとおり二個の根抵当権すなわち

(1)  福井地方法務局昭和三三年一二月一八日受付第一二、四八三号をもつて、訴外株式会社福井相互銀行のため設定登記を経由された元本極度額金三〇〇万円の根抵当権にして、同地方法務局昭和三七年一〇月三〇日受付第一二、九九九号をもつて被控訴人に移転の登記が経由されたもの、

(2)  同地方法務局昭和三四年一一月一三日受付第一二、〇四一号をもつて訴外青木茂のため設定登記を経由された元本極度額金二〇〇万円の根抵当権にして、同地方法務局昭和三五年四月二〇日受付第四、一一一号をもつて被控訴人に移転の登記が経由されたもの

にもとづいて交付さるべきものである。

三、しかして右(1)の根抵当権の発生、内容および移転の経過はつぎのとおりである。すなわち訴外株式会社福井相互銀行は根抵当権設定相互掛金、手形取引、当座借越、および継続貸付契約書ならびに手形取引約定書(乙第四号証の一、二)記載のとおり、昭和三三年一二月一八日訴外渡アサノとの間に、同女が振出、裏書、引受若しくは保証にかかる手形債務につき(乙第四号証の一の契約第二一条)手形が要件の欠缺により無効となつた場合、権利保全手続の欠缺により手形上の権利が消滅した場合および偽造変造、滅失した場合でも手形面金額と同額の債務を負担し損害金と共に弁済する旨の特約(乙第四号証の二の約定第三条)を附した手形取引契約を締結し、同契約上現在取得しおよび将来取得することあるべき債権を担保するため、主債務者訴外渡アサノ所有にかかる福井市佐佳枝中町一三九番の二の宅地、同町一〇〇番地所在の家屋番号同町一六四番の店舗および連帯保証人訴外渡勝栄の所有にかかる同市佐佳枝下町八九番の七の宅地(いずれも本件競売物件)に対し、元本極度額金三〇〇万円、遅延損害金日歩五銭の約の根抵当権の設定をうけ、前記のとおりその設定登記を経由した。

しかして、被控訴人は手形取引契約承継契約書(乙第四号証の三)記載のとおり、昭和三七年一〇月二九日前記訴外銀行、訴外渡アサノ、訴外渡勝栄との間に、右訴外銀行と訴外渡アサノ、訴外渡勝栄間の基本取引契約を現存債権を含めて根抵当権付のまま承継する契約を締結し、前記のとおり、その根抵当権移転の登記を経由した。なおその際訴外渡アサノ、訴外渡勝栄両名は右訴外銀行の現存債権はもちろん、被控訴人が現に取得し又は将来取得することあるべき債権もすべて右根抵当権の被担保債権となることを確認したのである。

四、次に(2)の根抵当権の発生、内容および移転の経過はつぎのとおりである。

訴外青木茂は根抵当権設定契約証書(乙第五号証の一)記載のとおり、昭和三四年一一月一二日主債務者としての前記訴外渡勝栄および連帯保証人兼担保提供者としての訴外渡アサノとの間に、右主債務者の現在若しくは将来の借受金および裏書又は保証した約束手形ならびに為替手形上の債務その他債務一切を担保するため、前記不動産全部に対し元本極度額金二〇〇万円、遅延損害金年三割、手形に法律上の要件を欠き又は手形の欠陥により支払又は償還を免るべき場合においても、免責を主張せず、独立した民事の債務を負担したものとしてその元利金を弁済する特約を附した根抵当権の設定契約を締結し、前記のとおりその設定登記を経由した。

しかして、被控訴人は乙第五号証の二の根抵当権移転登記申請書記載のとおり、昭和三五年四月一四日前記訴外渡勝栄、訴外渡アサノ両名の承諾のもとに、前記青木茂より右根抵当権をその基本契約とも譲渡をうけ前記のとおりその根抵当権移転の登記を経由したものである。

なお乙第五号証の一の根低当権設定契約証書第三項、第六項に約束手形と記載してあるも、該記載は例示的記載であつて該契約上の根抵当権により担保さるべき債務は為替手形をも含むものである。

右(2)の根抵当権はいわゆる包括根抵当である。根抵当権の登記に関する法務省当局の見解が如何ようであれ、法律上包括根抵当は有効と解すべきである。

然らば主債務者たる訴外渡勝栄の訴外福栄商事株式会社のためにする連帯保証にかかる債権も又被担保債権として右根抵当権の対象となるべく、右訴外渡勝栄が手形額面と同額の保証債務の存在を承認して各手形の裏書をなしたものである以上、本件配当表による配当は手形によらずとも結論において正当と解するほかはない。

乙第四号証の一、二記載の特約は単に基本契約当事者間に存在する原因関係にもとづいて振出された手形についてのみ適用されると解すべきものではない。

五、本件為替手形(甲第五ないし第一一号証の各一、二)についての最終裏書が戻裏書に該当するものであることは争わないが、訴外渡アサノ、訴外渡勝栄の各裏書は引受人たる訴外福栄商事株式会社(昭和三五年二月一二日福栄産業株式会社と商号変更)の債務を保証する趣旨でなされたものであり、振出人たる被控訴人は遡求債務の履行を拒みうる関係にあるものである。

かかる場合においては戻裏書の被裏書人と雖も、前者に対して遡求権の行使をなしうるものと解すべきである。

六、被控訴人は昭和三四年一一月一〇日より昭和三五年四月三〇日までの間に訴外福栄商事株式会社に対し継続して代金合計金一、三四〇万三、五五四円相当の原糸を売渡したが、訴外会社は昭和三五年二月二〇日までに内金合計金五二五万六、八三四円を支払つたのみで、残金八一四万六、七二〇円を弁済しなかつた。本件各為替手形(甲第五ないし第一二号証の各一、二)はこの残代金支払確保のための手形である。

前記訴外渡勝栄は前記訴外福栄商事株式会社の代表取締役であり、前記訴外渡アサノは訴外渡勝栄の妻であるところ、昭和三四年一一月一三日右訴外会社が前項の継続取引上被控訴人に対して負担することあるべき一切の債務につき連帯保証を約し、且つ右連帯保証債務の履行を担保するとて、前記四記載の(2)の根抵当権を設定し前記のとおり右根抵当権は被控訴人に譲渡せられたのである。

右根抵当権設定の登記原因は昭和三四年一一月一二日付手形割引契約となつているが、これは当事者が前記商取引上発生する売買代金の支払についてはその支払確保のための手形が交付されることになつていたため、安易に考えてこれを手形割引契約としたものでその実態は前記のとおりである。

その後訴外福栄商事株式会社は営業を廃止し事実上倒産してしまい、訴外会社より前記の残債務の履行をうけられるのぞみが全くなくなつてしまつたので、被控訴人はやむなく前記約定にもとづき保証債務の履行を請求せざるをえない破目となつた。

そしてその請求の過程において手形面でもその保証責任を明らかにするため、期限後ではあるが、右両名の連続裏書をうけたのである。

すなわち訴外渡勝栄、訴外渡アサノ両名は特に担保責任を認めてこれが期限後裏書をなしたものであるから、これらの手形金についても配当が行われるのが正当である。

このことは若し根抵当権設定登記上の登記原因を実態に合致させるために更正すれば、手形を使用しなくても同様の配当関係になるであろう。

七、訴外渡勝栄は本件各手形の裏書をするに際し、訴外福栄商事株式会社の代表者たる地位と訴外渡勝栄個人の地位において各債務を承認若しくは時効の利益の放棄を行つたものである。すでに当事者において承認若しくは時効の利益の放棄を行つた後にあつては、債権者が時効の完成を代位して援用する余地はない。

(証拠)(省略)

理由

福井地方裁判所が訴外早瀬重志の申立により訴外渡勝栄、訴外渡アサノ所有にかかる控訴人主張の不動産に対し競売手続を開始し、控訴人がその主張のごとき経過をもつて右不動産を競落し、同裁判所が別紙甲号目録記載の売得金交付明細表を作成したこと、控訴人が右配当期日に出頭し、被控訴人に対する配当金の全部につき異議を申立て、被控訴人が承諾しなかつたので異議が未完結に終つたこと、被控訴人の配当要求の理由は被控訴人振出にかかる手形につき、為替手形については戻裏書を、約束手形については裏書をそれぞれうけ、現に各手形の所持人であり、これが債権担保のため本件不動産に根抵当権を有すというにあることについては当事者間に争がない。

控訴人は被控訴人が所持するに至つた訴外渡勝栄、訴外渡アサノの裏書にかかる為替手形金(甲第五ないし第一一号証の各一、二)約束手形金(甲第一二号証の一、二)については配当を取消すべきであると主張し、被控訴人はこれを争うので、以下この点について考察する。

一、まず控訴人は右為替手形および約束手形は債務者訴外渡勝栄、訴外渡アサノ、被控訴会社代表者青木茂ならびに訴外福栄商事株式会社の元専務取締役訴外松岡清らが共謀の上、競売売得金を詐取せんと企て、不当な配当を要求するため虚偽の記入をなした無効の手形であると主張するが、これを認むべき証拠はないから控訴人の右主張は採用できない。

二、次に、控訴人は本件各根抵当権の被担保債権は手形取引若しくは手形割引契約にもとづく債権に限定されているところ、被控訴人主張の為替手形金約束手形金はこれに該当しないのみならず、原因関係の連帯保証にかかる債権も被担保債権にならず、然らずとしても、登記がなされていないから控訴人に対抗しえない旨主張する。

成立に争のない乙第四号証の一ないし三によれば、昭和三三年一二月一八日訴外株式会社福井相互銀行と訴外渡アサノとの間に同女が振出、裏書、引受、若しくは保証にかかる手形債務につき、手形が要件の欠缺により無効となつた場合、権利保全手続の欠缺により手形上の権利が消滅した場合および偽造変造滅失した場合でも手形面金額と同額の債務を負担し、損害金と共に弁済する旨の特約を附した手形取引契約を締結し、同契約上現在取得しおよび将来取得することあるべき債権を担保するため、主債務者訴外渡アサノ所有にかかる福井市佐佳枝中町一三九番の二の宅地同町一〇〇番地所在の家屋番号同町一六四番の店舗および連帯保証人訴外渡勝栄の所有にかかる同市佐佳枝下町八九番の七の宅地に対し元本極度額金三〇〇万円、遅延損害金日歩五銭の約の根抵当権設定契約を締結し、右根抵当権設定登記を経由したこと、昭和三七年一〇月二九日被控訴人が訴外銀行、訴外渡勝栄との間に、右訴外銀行と訴外渡アサノ、訴外渡勝栄間の基本取引契約を現存債権をも含めて根抵当権付のまま承継する契約を締結し、その旨の根抵当権移転登記を経由するとともに、訴外渡アサノ、訴外渡勝栄は右訴外銀行の現存債権はもちろん、被控訴人が現に取得し又は将来取得することあるべき債権もすべて右根抵当権の被担保債権となることを確認したことが認められる。

成立に争のない乙第五号証の一、二によれば、昭和三四年一一月一二日訴外青木茂と主債務者訴外渡勝栄、連帯保証人兼担保提供者訴外渡アサノ間に、右主債務者の現在若しくは将来の借受金および裏書又は保証した約束手形ならびに為替手形上の債務その他債務一切を担保するため、前記不動産全部に対し元本極度額金二〇〇万円遅延損害金年三割、手形に法律上の要件を欠き又は手形の欠陥により支払又は償還を免るべき場合においても免責を主張せず、独立した民事の債務を負担したものとしてその元利金を弁済する特約を附した根抵当権の設定契約を締結し、右根抵当権設定登記を経由したこと、昭和三五年四月一四日被控訴人は右訴外渡勝栄、訴外渡アサノ両名の承諾のもとに前記青木茂より右根抵当権をその基本契約とも譲渡をうけ、前記根抵当権の移転登記を経由したことが認められ、右根抵当権設定契約証書(乙第五号証の一)第三項、第六項には約束手形と記載してあるも右記載は例示的記載というべく、為替手形も含むものと解せられる。

以上の認定事実によれば被控訴人の主張する約束手形、為替手形が右根抵当権の被担保債権となるものというべく、原因関係たる連帯保証にかかる債権についても被担保債権に含まれるというべきである。

控訴人は登記面に表示された被担保債権は手形取引契約にもとづく債権若しくは手形割引契約にもとづく手形債権に限定されているから、被控訴人主張の連帯保証契約にもとづく債権については控訴人に対抗しえない旨主張し、成立に争のない甲第一四号証の一ないし三によれば、本件各根抵当権の被担保債権は手形取引若しくは手形割引契約にもとづく債権として登記されていることが認められる。

ところで、根抵当権の設定も不動産に関する物権の取得として登記をもつて対抗要件とするこというまでもないが、債権発生の原因の登記がなくとも極度額と根抵当なる旨の表示があれば足ると解される。(最高裁昭和三二年九月九日判決民集一一巻七号一二二六頁参照)

従つて基本契約の定は根抵当権設定登記の必要要件ではないとはいえ、根抵当権設定契約の際当時者間の合意で被担保債権の決定基準が定められた場合には基本契約の登記もなしうべく、一旦右の決定基準につき登記がなされた以上、変更登記をなすことなくして、これと異なる決定基準をもつて第三者に対抗しえないものというべきである。

本件においては、前記認定のとおり根抵当権設定契約において当事者間に主債務者の現在若しくは将来の借受金および裏書又は保証した約束手形ならびに為替手形上の債務その他債務一切を担保する旨の合意がなされているのであるから、根抵当権設定登記にあたつて包括的決定基準として登記すべきであつたところ、手形取引ないし手形割引契約に限定して被担保債権にすると解される登記がなされているので、被控訴人主張のごとき包括的決定基準をもつてしては第三者たる控訴人に対抗しえないものというべきである。

してみれば、被控訴人主張の本件各手形の原因関係たる連帯保証にもとづく債権をもつては本件各根抵当権の被担保債権として控訴人に対抗しえないこというまでもない。

なお控訴人は本件各手形はいずれも被担保債権の決定基準とされている手形取引ないし手形割引によつて生じたものではない旨主張するが、手形債権として行使しうるかぎりにおいては被担保債権に含まれると解される。

三、そこで被控訴人の配当要求にかかる各手形債権のうち控訴人に異議のあるものにつき手形上の請求権の有無を考察する。

1、成立に争のない甲第五ないし第一一号証の各一によれば、被控訴人の本件配当要求にかかる各為替手形には、いずれも振出日の記載を欠くことが認められ、右振出日の補充がなされないかぎり右各手形は手形要件を欠きその効力なきものといわねばならない。(訴外渡アサノ、訴外渡勝栄は本件根抵当権設定契約にあたり手形が要件の欠缺により無効となつた場合においても債務を負担する旨特約しているから前記各手形が無効であつても、訴外渡アサノ訴外渡勝栄において右各手形額面金額の支払を免れないけれども、右債権は本件根抵当権の被担保債権として控訴人に対抗しえないから優先権を主張しえない。)

2、本件為替手形(甲第五ないし第一一号証の各一、二)の最終裏書が戻裏書に該当することについては当事者間に争なく、当審における被控訴会社代表者青木茂尋問の結果によれば、本件各為替手形の訴外渡アサノ、訴外渡勝栄の裏書は引受人たる訴外福栄商事株式会社の債務を保証する趣旨でなされたことが認められ、振出人たる被控訴人は訴外渡アサノ、訴外渡勝栄よりの遡求債務の履行を拒みうる関係にあるものというべく、戻裏書の被裏書人と雖もかかる場合には前者に対して遡求権の行使をなしうると解される。しかしながら右各為替手形につき支払期日に支払場所に支払のための呈示がなされていないこと前示甲第五ないし第一一号証の各一により明らかであるのみならず、訴外渡アサノ、訴外渡勝栄の裏書は期限後裏書であること当事者間に争なく、右裏書は指名債権譲渡の効力のみを有するにすぎないから被控訴人は遡求権の行使をなしえないこというまでもない。(訴外渡アサノ、訴外渡勝栄は本件根抵当権設定契約の際、権利保全手続の欠缺により手形上の権利が消滅した場合においても債務を負担する旨特約しているから本件各為替手形額面金額の支払を免れないけれども、右債権は本件根抵当権の被担保債権として控訴人に対抗しえないから優先権を主張しえない。)

3、本件約束手形(甲第一二号証の一、二)の最後の裏書が期限後裏書であること、支払期日に支払場所に支払のための呈示がなされていないことは成立に争のない甲第一二号証の一、二により明らかである。期限後裏書は指名債権譲渡の効力のみを有するとはいえ、譲渡の方式としては裏書の記載をして手形を交付するのみでよく、民法所定の対抗要件を具備することを要しないが、支払期日に支払呈示のなされていない以上、所持人たる被控訴人において裏書人たる訴外渡アサノ、訴外渡勝栄に対して遡求権を行使しえないこというまでもない。(前記為替手形と同様訴外渡アサノ、訴外渡勝栄において根抵当権設定契約に際し、権利保全手続の欠缺により手形上の権利が消滅した場合においても債務を負担する旨特約しているから、本件手形額面金額の支払を免れないけれども、右債権は本件根抵当権の被担保債権として控訴人に対抗しえないから優先権を主張しえない。)

以上のごとく被控訴人の配当要求にかかる債権(但し後記異議のない分をのぞく)は手形法上の権利として認められないから、原因関係上の債権(一般債権)として配当要求するは格別、本件根抵当権による配当要求は失当である。

よつて控訴人の時効の主張については判断するまでもなく、本件配当表に対する控訴人の異議は理由あるものというべきである。

してみれば、被控訴人の本件配当要求債権のうち控訴人の異議のない金一三五万円の約束手形金残額債権元本および利息金三四万一、五五〇円計金一六九万一、五五〇円をのぞいては、その余の分はいずれも排斥を免れない。

よつて甲号目録記載の売得金交付明細表は変更さるべきであるが、本件配当手続においては被控訴人の右債権のほか、訴外早瀬重志の債権金二五一万七、四四〇円(元本金一六〇万円、利息金九一万七、四四〇円)および控訴人の債権合計金四二二万〇、五〇〇円とそれに対する遅延損害金の債権届がなされていることは成立に争のない甲第一三号証の二一、二二により明らかである。

右債権届にかかる債権のうち、訴外早瀬の分については、官署作成部分については成立に争なくその余の部分についても弁論の全趣旨よりみて成立を認めうる甲第一七号証の一、弁論の全趣旨よりみて成立を認めうる同号証の二ないし五により、控訴人の債権金一五八万四、〇〇〇円(元本金一〇〇万円、利息金五八万四、〇〇〇円)については成立に争のない甲第一三号証の一六ないし一八、官署作成部分については成立に争なくその余の部分につき控訴本人の当審における尋問の結果により成立を認めうる甲第一六号証の一、同じく控訴本人の右供述により成立を認めうる同号証の二ないし五によつていずれも抵当権付で存在することを認めることができる。

そこで売得金一、〇七四万四、三二三円をまず当事者間に争のない共益費用(第一順位金一二万一、〇三〇円、第二順位金二、一九〇円)に充当し、次いで成立に争のない甲第一四号証の一ないし三によつて認めうる抵当権の順位に従い、第三順位として被控訴人の前記控訴人に異議のない金一六九万一、五五〇円(元本金一三五万円、最後の二年分の利息金三四万一、五五〇円)、第四順位として訴外早瀬重志の金二五一万七、四四〇円(元本金一六〇万円、最後の二年分の利息金九一万七、四四〇円)、第五順位として控訴人の抵当権付債権金一五八万四、〇〇〇円(元本金一〇〇万円、最後の二年分の利息金五八万四、〇〇〇円)に充当し、残余は訴外早瀬の二カ年以外の損害金八五万四、八四〇円(別表No.1)と控訴人の二カ年以外の損害金五〇万三、二四〇円(別表No.2)および成立に争のない甲第一三号証の七、一〇、二四によつて認めうる控訴人の公正証書にもとづく一般債権金七七六万一、八七八円(元本金三二二万〇、五〇〇円、遅延損害金四五四万一、三七八円―別表No.3)の三口に比例分配の方法によつて充当すれば、別紙乙号目録記載のとおりの売得金交付明細表となる。

しかしながら訴外早瀬には本件売得金交付明細表(別紙甲号目録)に異議がないので、控訴人の本件異議により早瀬の配当額にはなんら影響を及ぼさないものと解され、被控訴人に配当できない分は控訴人の有する債権額の限度で控訴人に配当し、残余の金額はこれを債務者に交付することに定めるべきものと解されるところ(最高裁昭和四〇年四月三〇日判決―集一九巻三号七八二頁参照)、残額は控訴人の債権額の範囲内であるのでこれを控訴人の順位五の二カ年以外の損害金と一般債権に比例分配の方法により配当すべく、その売得金交付明細表は別紙丙号目録のとおりとなるから、本件売得金交付明細表は右丙号目録のとおり変更さるべきである。

以上の次第ゆえ、右と結論を異にする原判決は維持できないから、民事訴訟法第三八六条、第九六条、第八九条に従い、主文のとおり判決する。

別紙甲号目録は、第一審添付甲号目録と同一につき省略

別紙

乙号目録

売得金交付明細表

一、金壱千七拾四万四千参百弐拾参円

〈省略〉

別紙

丙号目録

売得金交付明細表

一、金壱千七拾四万四千参百弐拾参円

〈省略〉

乙号目録の計算説明書

順位三の債権額一、三五〇、〇〇〇円((株)青木商店)は甲第一三号証の二〇に表示されている1の金額である。

順位三の債権額三四一、五五〇円((株)青木商店)は甲第一三号証の二二に表示されている2の金額である。

順位四の債権額一、六〇〇、〇〇〇円(早瀬重志)は甲第一三号証の二一に表示されている(1)(3)(5)(7)の合計額である。

順位四の債権額九一七、四四〇円(早瀬重志)は甲第一三号証の二一に表示されている(2)(4)(6)(8)の合計額である。

順位五の債権額一、〇〇〇、〇〇〇円(吉田藤太郎)は甲第一三号証の二〇に表示されている(1)(3)(5)(7)の合計額である。

順位五の債権額五八四、〇〇〇円(吉田藤太郎)は甲第一三号証の二〇に表示されている(2)(4)(6)(8)の合計額である。

順位六の債権額八五四、八四〇円(早瀬重志)は甲第一三号証の二一に表示されている(1)(3)(5)(7)の各元金に対する配当期日(昭和三九年三月一八日)より遡る二ケ年以外の損害金合計額である。(即ち昭和三七年三月一六日より更に遡つて各元金の支払期日の翌日まで日歩八銭の割合による損害金)―なお計算明細はNo.1の「表」を参照。

順位七の債権額五〇三、二四〇円(吉田藤太郎)は甲第一三号証の二〇に表示されている(1)(3)(5)(7)の各元金に対する配当期日(昭和三九年三月一八日)より遡る二ヶ年以外の損害金合計額である。(即ち昭和三七年三月一六日より更に遡つて各元金の支払期日の翌日まで日歩八銭の割合による損害金)―なお計算明細はNo.2の「表」を参照。

順位八の債権額三、二二〇、五〇〇円(吉田藤太郎)は甲第一三号証の二〇に表示されている(9)(11)(13)(15)(17)(19)(21)(23)の各元金の合計額である。

順位八の債権額四、五四一、三七八円(吉田藤太郎)は甲第一三号証の二〇に表示されている(9)(11)(13)(15)(17)(19)(21)(23)の各元金に対する配当期日(昭和三九年三月一八日)より遡つて各元金の支払期日の翌日まで日歩九銭八厘(一口のみ一〇銭九厘)の割合による損害金合計額である。―なお計算明細はNo.3の「表」を参照。

別紙

二年以外

No.1

早瀬重志

抵当分(順位四番の抵当権)

〈省略〉

No.2

二年以外

吉田藤太郎

抵当分(順位五番の抵当権……上田定右ヱ門譲受分含む)

〈省略〉

No.3

一般債権(公正証書)

吉田藤太郎

〈省略〉

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